規制の砂場
シンガポールの"Regulatory Sandbox"について調べる機会があったので、Blogでも簡単にまとめてみる。
●Reguratory Sandboxとは
昨今、Fintechと呼ばれる最新技術を用いた金融サービスの変革が流行っている。
スマホで決済できるサービスとか、ビットコインなんかがその一例。
だけど、金融業界では公正な取引を保つために規制が多く、新しい事業を起こしても規制的にNGになる可能性が高く、新しい事業が参入しづらい。
とはいえ、規制のせいにして新しいサービスを開発しないければ、他と後れを取ってしまう・・・。
なので、シンガポール金融管理局(MAS)は"Reguratory Sandbox"という制度を用意した。
金融機関などの関連企業が、規制の枠に捉われないでFintechを用いたサービスを安全にテストできるようにするのが目的である。
Reguratory Sandboxは日本語にすると「規制の砂場」となるが、これはMASから企業に対して砂場という実験場を提供するので自由に遊んでくださいね、という意味だ。
●支援対象・内容
対象となる企業は、金融機関に限らず、Fintech関連のIT企業や研究機関など、MASからの監督対象となりそうなサービスを開発している会社全般。
サービス開発後は、シンガポールにサービスを展開することが前提となる。
関連企業はReguratory Sandboxを適用して開発したいサービスの内容を、MASに申請する。
MASの承認後、MASはReguratory Sandbox適用企業に対して、サービス開発するにあたって、ネックとなる法規制を緩和することができる。
対象となる法規制の要件は、Cash balances、Licence feesなど。Confidentiality of customer informationとか緩和してはいけない規制もある。
●具体例
日系企業もReguratory Sandboxを使って、シンガポールで実証実験を進めている。
三菱東京UFJ銀行と日立製作所は、ブロックチェーンを活用して小切手の決済システムの実験を開始した。(2016年)
実験を通して技術・セキュリティ・法規制など様々な観点から問題を洗い出し、サービスの実現を目指す。
本システムが導入されると、金融機関における業務の自動化や取引記録の改ざん防止、取引の迅速化など様々な効果がもたらされる。
シンガポールでは手書きの小切手決済が取引の6割を占めており、マーケットの需要もある。
また前述の通り、日本では新サービスが規制に触れるかどうかグレーゾーンになるケースもあるので、Reguratory Sandboxが整っているシンガポールを実験の場として選んだのではないか。
●雑感
先日ニュースで、Fintechによる人材への影響を緩和するために、4000人の雇用を金融業界で創出するとあった。
シンガポールは小さい国でかつ公の力が比較的強いことからできることかもしれないが、このニュースにせよ、Reguratory Sandboxにせよ、マーケットのニーズを察知して迅速かつ的確に動けるのは評価できるポイントだと思った。
●References
http://fis.nri.co.jp/ja-JP/publication/kinyu_itf/backnumber/2017/02/201702_7.html